製造業における工場内でのモノの移動全般を指す「構内物流」。構内物流は工場全体の作業効率化や生産性の向上を担う重要な要素です。一方で、構内物流で課題が発生しているものの、「改善方法が分からない」「改善まで手が回らない」といった悩みを持つ方もいるかもしれません。
本記事では、構内物流の概要や役割とともに、構内物流上で発生する課題や改善の手順を解説します。構内物流の効率化や自動化に役立つ支援ロボットについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
構内物流とは
構内物流とは、製造業の工場内におけるモノの移動のことです。工場内物流や生産物流、マテハン(マテリアルハンドリング)とも呼ばれています。製造業はひとつの製品の完成までに幅広い工程や生産ラインが存在するため、各工程やライン間でモノの運搬が発生します。
構内物流は最適化することで、工場全体の効率化や生産性の向上が実現する、重要な要素と言えます。
工場内における構内物流の役割
構内物流は工場内のモノを運搬するだけでなく、さまざまな役割を担っています。構内物流の持つおもな役割を解説します。
生産ラインの付加価値向上
構内物流は、生産ラインの付加価値を上げる役割を持っています。工場は、ものづくりを実現することで価値を生み出せる施設です。生産ラインにはものづくりに集中し、最大限の生産性と品質を向上できる環境整備が求められています。
生産ラインで発生する無駄を極力排除することで、ものづくりに集中できる環境が実現できます。構内物流は、生産順に沿った資材の供給や、完成品・空容器の適時回収を通じて、生産ラインの作業者が最大限の生産性と品質を発揮し、付加価値を高められる環境づくりを担っています。
ジャストインタイムの実現
構内物流は、工場内に必要なモノを必要な時、必要な分だけ供給できる「ジャストインタイム方式」を実現する役割があります。工場物流が機能せず、必要なモノの供給が止まってしまうと、工場の生産ラインが途中で詰まったり、流れが悪くなったりする原因となります。工場の生産ラインをスムーズに稼働させ、稼働率や生産性を上げる上でも、構内物流は重要な要素と言えます。
効率的物流の実施
構内物流は、効率的な物流を実施する役割も担っています。工場の稼働率を向上させるためには、不必要な工程間搬送を削減することが有効です。工場内での工程間搬送を最小限に抑えるために、生産ラインや工程を工夫する必要があります。やむを得ず工程間搬送が発生する場合は、構内物流を最適化することで、効率的な物流オペレーションを実現できます。
製造業の物流における構内物流以外の種類
製造業の物流では、構内物流以外にも、モノの流れ方や作業内容に応じてさまざまな種類があります。以下では、製造業の物流における構内物流以外の種類を紹介します。
調達物流
調達物流とは、製品を作るために必要な部品や原材料などを仕入先から調達することです。調達のグローバル化や原材料の供給難といった背景からも、製造業においては調達物流も重視されています。
販売物流
販売物流とは、工場で製造された製品が、物流倉庫や小売店などを経由して消費者のもとへ届けられる流れのことです。一般的に物流と呼ばれるのは、販売物流を指すことが多くなっています。近年、EC事業が拡大していることから販売物流の効率化が特に求められるようになりました。
回収物流
回収物流とは、不良品や使用済みのもの、リサイクル品を回収する際に発生するモノの流れのことです。近年環境問題への配慮が求められていることから、製造業では回収物流も重要視されています。
構内物流の具体的な作業内容
構内物流のおもな作業内容を工程ごとに解説します。
①:入庫
入庫作業とは、仕入先から送られてきた部品や原材料などを受け取り、それらが発注内容通りに到着しているかを確認する工程を指します。確認後は、カゴ車やフォークリフトで保管する棚などへ搬送します。ケース商品の場合は、パレットからの積み下ろしを行います。
入庫作業は積み下ろしなどの重い荷物を扱う重労働が多く、作業者へ大きな負担がかかることも多いです。保管場所への搬送にフォークリフトを利用する、積み下ろしにでパレタイザーを活用する、といった作業者の負担軽減のための取り組みを行うことで、円滑な作業につながるでしょう。
②:保管
入庫した部品や原材料、工場で生産された完成品は在庫として保管します。部品や原材料は製造現場で使用するまでは在庫としてカウントされます。工場で生産された完成品は、製品在庫として保管されます。
倉庫で保管する在庫は、ロケーションや数量などの適切な管理が必要です。在庫管理が適切でない場合、欠品や紛失、破損、品質低下が発生したり、必要なモノを探す無駄な作業が発生したりといった可能性があります。特に多くの在庫を抱える現場では、人の手による正確な在庫管理が難しいことから、システムやロボットを活用した在庫管理の自動化や、自動倉庫システムを導入する企業も多くなっています。
③:出庫(ピッキング)
出庫とは、製造現場に必要なモノを集める作業です。必要なときに必要なモノを供給するために、ピッキングリストに記載された品番や数量を確認しながら、必要なモノを素早く正確に集めることが求められています。
出庫は広い工場内を従業員が歩き回ると大きな負担となる、どこに何があるかを正確に把握しなければいけないため属人化しやすい、ミスが生じやすいといった問題が発生しやすい工程です。そのため、ロボットや自動倉庫システムなどのテクノロジーを導入し出庫の効率化をする方法もあります。
④:搬送
入庫、保管、出庫の工程間で発生する、移動に伴うモノの動きが搬送です。搬送作業がストップしてしまうと、次の工程が止まってしまいます。搬送作業を効率化することで、工場全体の生産性の向上につながります。
⑤:出荷
工場で生産された製品を、一時保管し出荷する作業です。出荷がスムーズに行われるように、製品の種類別の仕分けや荷姿を揃えるといった作業も行われています。
出荷は入庫と同じく、重い荷物を取り扱うため従業員の負担が大きくなりやすい工程です。フォークリフトやパレタイザーなどの機器や、ロボットや自動倉庫システムなどのテクノロジーを導入することで、負担軽減につながるでしょう。
構内物流上で発生する課題
構内物流は、各作業工程間で以下のような課題が発生しやすいです。
生産性の低下
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倉庫からの出庫が滞り、生産ラインが動かない
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生産ラインへ投入するモノが多すぎて、作りすぎが発生している
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モノの置き場所や適正な在庫数が決まっていないため、スペースが確保できない
従業員への負担
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必要なモノがどこにあるか分からず、探し回る手間や無駄が発生する
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生産ラインへ供給したモノが投入順序に従っていないため、作業者が仕分けしながら作業をしている
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使用済み資材、完成品が生産ラインにたまってしまい作業者が搬出しながら作業をしている
製造業において構内物流は、必要なときに必要なモノを用意できる重要な要素です。構内物流で発生している各課題を解決することで、作業員の負担の軽減や作業の効率化につながり、工場全体の生産性向上にもつながります。
ものづくりにおける付加価値に構内物流は直接関係していないため、他の要素と比較すると軽視されやすい傾向にあります。工場全体の生産性向上を検討しているなら、構内物流の改善を検討することが重要です。
構内物流の改善方法
工場全体での生産性が低い、作業効率が悪いといった課題が発生している場合、構内物流の改善により課題が解決する可能性があります。構内物流のあるべき姿を実現するための具体的な改善方法を解説します。
製造現場を優先して改善する
構内物流はさまざまな工程や生産ラインで発生しています。構内物流全体をいきなり改善しようとするのはおすすめできません。
構内物流のもっとも大きな役割は、製造現場が効率よくものづくりを進められる環境を整えることです。そのため、工場内でも製造現場の効率化を最優先して構内物流の改善を行いましょう。
たとえば搬送作業を効率化する場合、搬送を自動化するコンベヤなどの大型機器やシステムの導入が必要です。大きなスペースが必要な機器やシステムは生産ラインやスペースといった製造現場のスペースを圧迫したり、生産ラインのレイアウトを変更したりといった、製造現場の作業効率を下げてしまう変更を招く恐れがあります。
工場全体の生産性や効率性を高める、という本来の目的を達成するために、まずは製造現場の構内物流改善に優先的に取り組みましょう。
課題を洗い出す
製造現場の構内物流にて発生している課題の洗い出しを行います。まずはどの工程で無駄な非効率な作業が発生しているかを洗い出しましょう。
製造現場で発生しやすい課題と解決策の例を、以下にあげました。
課題 |
解決方法の例 |
製造現場の作業者が搬送作業も行っている |
物流担当者が搬送作業を行う |
必要なモノが必要なときに供給されない |
入庫時の配置場所を見直す 入出庫のルールを徹底する |
出庫に時間がかかる |
保管効率を上げる |
モノの供給過多で多く完成品ができてしまう |
出庫時のモノの量を見直す |
完成した製品や使用済みの材料や資材が作業スペースを圧迫してしまう |
完成した製品や使用済み材料・資材をすみやかに回収できる仕組みを作る |
課題を洗い出すには、製造現場上で無駄や遅延が発生している箇所や工程をまず把握します。無駄や遅延の原因=課題を把握することで、物流を効率化させるポイントがつかめるでしょう。
課題解決のための具体的な施策として考えられるのが、工場レイアウトの改善、作業フローの見直しやシステムの自動化、機械やロボットの導入などです。さまざまな方法で無駄な工数や作業の是正や、効率化を図りましょう。
構内物流の流れを管理する
製造現場で発生している課題の洗い出しや具体的な解決策の立案が完了したら、次に構内物流全体の改善に取り組みます。
構内物流には、材料や資材の納入から製品の完成まで、工場内の製造現場にて行われる一連の流れが集約されています。この一連の流れを管理することも、構内物流の改善に有効です。構内物流には、工場内のモノを取り扱う工程や過程での情報が集約されているためです。たとえば完成品の受け入れ作業の進捗状況を確認することで、製造現場で作業が遅れている製造品を発見したり、工場全体の在庫の状況を確認したりといったことが可能です。
構内物流全体の流れを管理するためにシステム化をするなどの取り組みを行うことで、工場全体でのものづくりが円滑に進むようになります。製造現場の課題の抽出とともに、構内物流の流れを管理できる取り組みを導入し、効率化を目指しましょう。
構内物流全体の効率化を進めるには、以下のようなロボットによる作業の自動化やDX化も有効です。
ロボットの種類 |
効果 |
パレタイザー デパレタイザー |
入出荷作業で発生する積み込み・積み下ろしを自動化する |
自動ロボット倉庫 |
入庫・保管・出庫作業が自動化できる |
AGV AMR |
工場内の搬送作業を自動化できる |
狭いスペースでも動作可能なAGVやAMRは、工場内の限られた空間を効率的に活用できるため、導入が積極的に進められています。
構内物流の改善に有効な搬送支援ロボットとは
構内物流の改善方法のひとつとして有効なのが、ロボットの導入です。ロボットを導入することで課題の発生している箇所や工程での作業の効率化や自動化が実現できます。
構内物流の改善に有効な搬送支援ロボット「CarriRo」を紹介します。
構内物流を改善するロボット「CarriRo」とは
「CarriRo」とは、さまざまな搬送物に対応できる搬送支援ロボットです。パレット型と台車型があり、現場の用途や条件に合わせたタイプを選べます。搬送作業の効率化や自動化を可能にする、3つの走行モードを備えたロボットです。
搬送支援ロボット「CarriRo」による構内物流の改善事例
搬送支援ロボット「CarriRo」による構内物流の改善事例を紹介します。
ロジエンジニアリング・設計から、リソース調達・保管・荷役・輸送などのオペレーションを一貫して展開し提供する物流会社「SBS東芝ロジスティクス株式会社」では、フォークリフトオペレーターの人手不足により荷受け作業を作業員の時間外でカバーすることが常態化している課題を抱えていました。
課題解決のために、同社の大阪管轄拠点で導入実績があり、さらに同社の持つ独自技術との親和性の高い「CarriRo」を導入しました。その結果、搬送作業を「CarriRo」が担うことで搬送工程の削減が実現。現場作業員がコア業務(ピッキング)に集中できることで現在の効率向上につながりました。
まとめ:構内物流のあるべき姿とは?
構内物流の概要や種類、発生しやすい課題や解決方法について解説しました。構内物流は製造現場の生産性と密接な関係にあり、構内物流を改善することで工場全体で発生している課題の解決や作業効率、生産性の向上につながります。構内物流のあるべき姿を実現するためにも、工場のものづくりにてより高い付加価値を提供できる環境を整えられるよう改善しましょう。
構内物流を改善するには、自動倉庫システムやロボットなど、課題や条件に合う解決施策を選ぶことが重要です。コラボット株式会社では、搬送支援ロボット「CarriRo」を通じて現場の環境や用途、条件に合わせた最適なAGV配置や提案をサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。