物流の効率化は、業界や国にとっても喫緊の課題です。物流の効率化を進めることで、コストの削減や労働力不足の解消が期待されていますが、実際、物流の効率化について何から手をつければよいのかわからない方が多いと思います。
そこで本記事では、物流の効率化が求められる背景を振り返りつつ、効率化のメリットや具体的な方法、先進的な事例まで幅広く解説していきます。この記事を読むことで、物流業務に関する課題解決の方向性を明確にし、効率的な物流体制を構築することができるでしょう。お悩みの方は、ぜひご覧ください。
なぜ物流の効率化が求められているのか
物流の効率化は、業界にとっても国家にとっても重要な課題です。ここでは、なぜ物流の効率化が必要とされるのか、その背景を詳しく説明します。
EC市場の拡大による物流量の増加
近年、個人宅への配送件数が急増し、物流業界の負担が大きくなっています。なぜなら、AmazonをはじめとするEC市場が急速に拡大しており、ネットショッピングが日常生活の一部となっているためです。具体的には、以下のように変化しています。
- 宅配便取扱個数:2023年度には約50.1億個に達し、2013年度の約36.4億個から大幅に増加しました。
- 巣ごもり需要の高まり:スマートフォンやインターネットの普及、新型コロナウイルス感染症が影響しています。
配達量が増える一方で、効率的な配送が実現しなければ、ドライバーの負担増や顧客満足度の低下といった課題が生じます。
労働力不足の深刻化
物流業界では、少子高齢化が深刻な影響を及ぼしています。長時間労働や重労働といった厳しい環境のため、若い担い手が減少しており、中高年層に依存せざるを得ない状況です。
また働き方改革も追い打ちをかけています。「物流の2024年問題」と言われていますが、2024年4月から自動車運転業務の年間時間外労働時間が960時間に制限されました。 労働時間が短くなることで輸送能力の低下・不足が懸念されています。
物流コスト削減の必要性の高まり
物流には、人件費、燃料費、車両リース費、倉庫管理費など、多くのコストが発生します。物流量の増加に伴い、これらのコストが企業経営を圧迫しています。特に2つの課題が顕著だと言われています。
- 小口配送の増加:トラックの積載率が低下し、非効率な運行が発生
- 再配達の課題:配送全体の約10~15%が再配達に該当し、追加コストは年間約6万人分の労働力に相当
こうした現状を改善するためには、物流業務の効率化が不可欠です。
環境問題への意識の高まり
物流業界は環境負荷の低減という課題にも直面しています。非効率な配送や再配達により排出されるCO2が懸念の一つです。
これに対して、国は「物流総合効率化法」をきっかけに、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを進めています。具体的には、「トラック輸送から鉄道や船舶へのモーダルシフト」「輸配送の共同化」「輸送網の集約」などです。
物流業務を効率化するメリット3選
上記のような背景を踏まえて、物流業務を効率化するメリットを3つに厳選してご紹介します。今後物流を効率化する業者の方がイメージしやすいよう、具体的な対策による効果もあわせてご紹介します。
①物流コストを削減できる
物流業務を効率化することで、物流コストを削減できます。物流には、輸送費や保管費、荷役費、物流管理費など、多くの費用が含まれます。
まず、在庫管理を見直せば、不要な在庫を削減することで保管費を抑えられます。また、倉庫管理システム(WMS)の導入やAIを活用して配送ルートを最適化すれば、人件費や燃料費も削減可能です。このようなコスト削減により企業の利益率が向上し、経営基盤の強化に結びつきます。
②従業員の負担を軽減できる
物流業務の効率化は、従業員の負担を軽減する効果もあります。具体的には以下のような改善が見られます。
- AGV(無人搬送車)の導入:工場や倉庫内での搬送作業をロボットが担うことによって省人化できる
- 倉庫内の動線を最適化:移動時間が減少し、ピッキング作業が効率的になる
- ハンディスキャナーの導入:検品や在庫管理の手間を省き、作業時間を短縮できる
このような改善によって長時間労働を抑制し、労働環境をより良いものにできます。結果として、離職率の低下や人材不足の解消にもつながります。
③サービス提供による顧客満足度が向上する
効率化された物流業務は、サービスの質を高め、顧客満足度を向上させます。配送スピードの向上や正確な出荷によって、商品をスムーズに受け取れる環境を提供可能。さらに、再配達の削減により、顧客の手間を軽減することも可能です。高品質なサービスを継続的に提供することで、顧客の信頼を獲得し、リピーターや新規顧客の増加につなげられます。
物流現場で業務を効率化する方法
物流現場で業務を効率化したい方向けに、実践しやすい具体的な方法をご共有します。それは以下の通りです。
- AIやロボットによる物流業務効率化
- 物流ネットワークの再編
- 物流システム(WSMなど)の導入
それぞれ解説していきます。
AIやロボットによる物流業務効率化
物流業界では、AIやロボットを活用することで業務の効率化を図る取り組みが進んでいます。
効果的な場面 | 得られる効果 | |
---|---|---|
AI(人工知能) | 過去のデータを基に分析した需要予測や配送ルートの最適化 | ・業務スピードと正確性の向上 ・トラックの積載効率の向上 |
ロボット | 倉庫内でのピッキング作業や商品移動の自動化 | 人手不足解消や作業の精度向上に寄与 |
初期投資が高額になる点は課題ですが、効率化によるコスト削減や長期的な運用メリットを考えると、導入の価値は十分にあります。
物流の改善を検討する際には、AIやロボットの活用を積極的に取り入れることをおすすめします。例えば、物流の効率化に寄与する「CarriRo®」のようなAGVの導入も先進的な事例の一つです。
物流ネットワークの再編
物流ネットワークを再編することで、輸送効率を大きく向上させることが可能です。具体的には、物流拠点や配送センターを集約し、拠点間の輸送距離を短縮することで、輸送コストを削減しつつ環境への負荷を軽減できます。
さらに、複数の企業が共同配送を実施することで、トラックの稼働台数を減らし、積載効率を高める取り組みも有効です。この方法を採用すれば、労働力不足や再配達の問題、配送遅延といった課題にも対応しやすくなります。
国土交通省が推進している「物流総合効率化法」では、物流ネットワークの改善に取り組む企業に対して、税制優遇や事業許可の一括取得といった支援が提供されています。こうした制度も積極的に活用しましょう。
物流システム(WMSなど)の導入
物流の効率化に欠かせない要素として、WMS(倉庫管理システム)をはじめとする物流システムの導入が挙げられます。これらのシステムを活用することで、在庫管理やピッキング作業の効率を大幅に高めることができます。例えば、バーコードスキャナーによる正確な検品や、効率的な倉庫内動線の設計が可能になります。
IoTやクラウド技術を組み込んだシステムを導入すれば、在庫状況をリアルタイムで把握できます。在庫の過不足を防ぎ、無駄なコストを削減するだけでなく、物流全体のスピードと精度を向上させることも可能です。
こちらも初期導入費用は発生しますが、業務効率の向上や人的ミスの削減を通じて、長期的にコストを回収できます。
国土交通省と物流の効率化
物流業界は、EC市場の拡大やドライバー不足など、多くの課題に直面しています。このような背景の中、国土交通省が中心となり、物流効率化を推進する取り組みが進められています。
以下では、物流総合効率化法やホワイト物流といった政府の具体的な施策について詳しく解説します。
物流総合効率化法とは
物流総合効率化法は、正式名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」といい、2005年に施行されました。この法律は、複数の企業が連携して物流業務を合理化し、環境負荷の低減や労働力不足の解消を図る取り組みを支援するものです。
たとえば、以下の施策が支援対象に含まれます。
- 輸送網の集約
- モーダルシフト
- 輸配送の共同化
この取り組みに参加することで、法人税や固定資産税の優遇、事業経費の補助といったさまざまなメリットを受けることが可能です。また、このような取り組みによって、物流コストの削減や効率化・省人化が推進するだけでなく、CO2排出量の削減といった環境面のメリットも得られています。
ホワイト物流とは
ホワイト物流は、物流業界の労働環境を改善することを目的とした取り組みです。2019年に国土交通省が主導してスタートしました。この施策では、特にトラックドライバーの労働条件改善が重点的に進められています。
具体的な内容として、積み下ろし作業の効率化や待機時間の短縮が挙げられます。これらにより、ドライバーの拘束時間を削減し、より働きやすい環境を整えることを目指しています。また、物流業界全体で長時間労働を是正することで、人材の流出や人手不足といった問題にも対応しています。
ホワイト物流への参加は企業の自主性に委ねられています。しかし、参加企業には社会的信用の向上や、効率化によるコスト削減といったメリットが期待できます。
国土交通省が推奨する物流効率化の方法一覧
国土交通省が推奨する物流効率化の方法として、以下の3つの概要について簡単に解説します。
- 輸送網の集約:倉庫や物流センターを一箇所にまとめ、輸送ルートを効率化する方法。この取り組みによってトラックの稼働台数を減らし、物流コストの削減や積載効率の向上を実現します。
- モーダルシフト:トラック輸送を、鉄道や船舶など環境負荷の低い輸送手段に切り替える方法。一度に大量の荷物を運べるため、輸送効率が高まり、ドライバーの負担軽減にもつながります。
- 共同配送:複数の企業が協力して同じ目的地への荷物を共同で配送する方法。これによりトラックの積載率が向上し、二酸化炭素の排出量削減など、環境への好影響も期待できます。
これらの方法は、環境への負荷を減らすだけでなく、労働力不足や物流コストの増加といった業界の課題を解決するための有効な手段です。自社の物流業務を見直す際に、これらの施策を取り入れることで、より効率的で持続可能な物流運営が実現できます。
物流業界の効率化に成功した事例
ここでは、物流の効率化における具体的な成功事例を通じて、効率化の成果や導入ポイントを解説します。
事例:ヤマト運輸で物流作業の効率化に成功
ヤマト運輸株式会社は、日本の物流業界を牽引する企業として、常に効率化を追求してきました。特に近年では、物流支援ロボット「CarriRo®」を導入することで、作業効率と環境改善を実現しています。
ヤマト運輸では、ロールボックスパレットを使用した荷物の仕分けや移動を従業員が手作業で行っていました。しかし、広大なターミナル内での搬送作業は従業員に大きな負担をかけており、労働力の確保も課題となっていました。
こうした課題を解決するため、同社はCarriRo®を導入。自動化された搬送システムにより、「無駄な移動の削減」「配送ルートの自動化」「労働負担の削減」などの成果を得ています。
「CarriRo®」による物流の効率化
「CarriRo®」は、コラボット社の自動運転技術を活用した自動搬送ロボットで、構内物流や倉庫における作業を効率化します。その特徴を以下にまとめます。
- 柔軟な運用:様々な搬送ルートを簡単に設定・変更できるため、現場の多様なニーズに対応できます。
- 簡単な操作性:作業員は短時間のトレーニングで操作方法を習得できます。
- 高い汎用性:特別な設備改造が不要で、既存のロールボックスパレットをそのまま利用できます。
汎用性が高いため、どの物流現場でも効率化に役立つと自負しています。無料でカタログをご提供しているので、興味ある方は下記からお申し込みください。
まとめ
本記事では、物流業務を効率化するメリットや具体的な方法を徹底解説してきました。物流効率化について理解が深まり、改善に向けた行動に一歩踏み出せるようになったのではないでしょうか。
改めて物流効率化のポイントを振り返ってみましょう。
- EC市場の拡大や労働力不足を背景に、物流業務の見直しは喫緊の課題
- コスト削減や従業員の負担軽減、顧客満足度向上といった具体的なメリットが期待できる。
- AIやロボット、物流ネットワークの再編、システム導入が効率化のカギとなる。
物流の効率化を実践することで、企業の競争力が高まり、環境負荷の軽減にもつながる未来が見えてきます。