物流業界では、コスト削減や業務効率化を実現が急務となっています。そんな中、ソリューションの一つとして注目されているのが「物流倉庫の自動化」です。物流倉庫を自動化すれば、より競争力のある物流体制を構築できる可能性があります。

 

本記事では、物流倉庫の自動化を成功させるために必要な知識や具体的な事例を分かりやすくご紹介。本記事を読むことで、効率的かつ現実的な自動化のステップを把握できます。

 

物流倉庫の自動化とは

 

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物流倉庫の自動化とは、倉庫内で行われる入庫、保管、ピッキング、出庫といった一連の業務を、機械やシステムで効率化する取り組みです。この取り組みにより、省人化が実現し、生産性も向上するため、物流業界で大きな関心を集めています。

 

物流倉庫の自動化が重要な理由

物流倉庫の自動化が重視される背景には、EC市場の拡大や深刻化する人手不足といった課題があります。経済産業省のデータでは、日本のBtoCやEC市場は継続して成長しており、それに伴い宅配便の取扱個数も増加しています。一方で、物流業界では作業員の確保が難しく、労働人口の減少が大きな問題となっています。

 

そんな中、物流倉庫の自動化はさまざまな効果をもたらします。

 

  • 業務効率の向上
  • 人手不足の解消
  • ヒューマンエラーの削減
  • 作業品質の安定化

 

昔と今の物流倉庫の違い

従来の物流倉庫では、多くの作業が手作業に頼っていました。例えば、ピッキング作業では作業員が倉庫内を歩き回り、リストを確認しながら商品を手で摘み取る方法が一般的でした。在庫管理も紙やエクセルを使うアナログな手法が主流で、データの正確さを維持するためには多くの時間と労力が必要でした。

 

現在の物流倉庫では、自動化技術の導入により作業の効率が飛躍的に向上しています。以下のような技術が広く使われています。自律走行型搬送ロボット(AMRやAGV)やデジタルピッキングシステム(DPS)、倉庫管理システム(WMS)などの技術により、倉庫内の作業効率は格段に向上しました。また、近年は導入コストが下がり、中小規模の倉庫でも自動化を進めやすい環境が整っています。

 

物流倉庫を自動化するメリット・効果

 

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物流倉庫の自動化には以下のようなメリットや効果があります。

 

  • 業務が効率化し、生産性が向上する
  • 省人化によってコストを削減できる
  • 製品やサービスの品質が安定化する

 

それぞれのメリットを参考に、自社に適した自動化ソリューションを導入すれば、競争力の向上が可能です。

 

業務が効率化し、生産性が向上する

物流倉庫を自動化することで、作業効率が大幅に向上します。従来、人手で行っていたピッキングや仕分け作業を自動化システムやロボットに任せることで、単純作業や無駄な移動を削減できます。

 

たとえば、自動搬送ロボット(AGVやAMR)を導入することで、商品の搬送が24時間途切れることなく進み、作業スピードが大幅に上がります。このように、自動化倉庫では単位時間あたりの作業量が増え、全体の生産性向上が可能です。

 

省人化によってコストを削減できる

物流業界が抱える人手不足の課題に対し、倉庫の自動化は大きな解決策となります。自動化システムを導入することで、人件費や採用コストを削減できます。たとえば、AGVなどを利用すれば年間で数百~数千万円相当の人件費を削減でき、省人化に成功する場合もあります。

 

また、自動倉庫システムなどを用いて空間を有効活用すると、コスト削減だけでなく、省スペース化による効率化も図れます。

 

製品やサービスの品質が安定化する

自動化倉庫は、作業ミスや品質のばらつきを大幅に削減します。手作業の場合、経験やスキルに依存するためヒューマンエラーが起こりやすいですが、自動化システムを利用すれば一定の品質を維持することが容易です。

 

自動化システムを構築すれば、アルバイトや海外実習生でも正確に作業を行えるようになりました。搬送工程でのミスがゼロとなり、安定した品質を実現できる可能性があります。

 

物流倉庫を自動化するデメリット・課題

 

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物流倉庫の自動化にはメリットがある一方で、デメリットや課題もあります。それは以下の通りです。

 

  • 高コストのため、導入に負担がかかる
  • 従業員研修と新体制づくりが必要となる
  • システムの複雑性に対応する必要がある

 

それぞれポイントを見ていきましょう。

 

高コストのため、導入に負担がかかる

物流倉庫の自動化には、初期費用が大きな課題となります。自動倉庫システムや搬送ロボットの導入にあたり、機器の購入費用や設置費用だけでなく、継続的なメンテナンス費用も発生します。

 

ただし、物流の自動化は、長期的に見れば人的コスト削減や作業効率の向上を通じて大きな効果を生み出します。そのため、事前に投資対効果をしっかりと試算することが重要です。

 

従業員研修と新体制づくりが必要となる

物流倉庫を自動化する際には、従業員への研修が欠かせません。新たな自動化システムを導入すると、操作方法や管理方法を学ぶ必要があり、従業員にとって大きな負担になる場合があります。

 

この課題を解決するには、導入初期に専門家の指導を受けることが有効です。また、システム導入と同時に、ヘルプデスクの設置や運用サポート体制を整備することも重要です。外部サービスの活用を検討すると、自動化の成功率が高まります。

 

システムの複雑性に対応する必要がある

物流自動化システムは、高度な技術が活用されているため、導入後の運用や管理が複雑になることがあります。例えば、AGVを導入する場合は、床に貼ったランドマークを基に自律走行を行いますが、このランドマークの設置やルート設計には専門知識が必要です。自動倉庫システムなどの複数のシステムが連携する仕組みでは、管理の難易度がさらに上がります。

 

こうした課題に対処するためには、導入前に綿密な計画を立てることが大切です。また、システムエラーやトラブルに備えて、定期的なメンテナンスやバックアップ計画を実施する必要があります。

 

物流倉庫を自動化する方法・システム5選

 

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物流業界では、少子化による人手不足やEC市場の拡大に伴う荷量の増加が深刻な課題となっています。このような問題を解決するために注目されているのが「物流倉庫の自動化」です。このセクションでは、物流倉庫の自動化を実現するための具体的な方法やシステムを5つご紹介します。

 

  1. AGV・AMR(自動搬送ロボット)
  2. 自動倉庫システム
  3. WMS(倉庫管理システム)
  4. 自動ピッキングシステム
  5. DAS(デジタルアソートシステム)

 

①:AGV・AMR(自動搬送ロボット)

自動搬送ロボットは、倉庫内での商品搬送を効率化し、省人化を可能にする画期的なシステムです。以下のような種類があります。

 

  • AGV(無人搬送車):磁気テープや誘導体を基に走行する無人搬送ロボット。シンプルな仕組みで、比較的容易に導入できます。
  • AMR(自律走行搬送ロボット):AIやセンサーを活用し、誘導体なしで自律的に走行できるロボット。障害物を自動で回避し、柔軟な搬送ルートの設定が可能です。

 

これらのシステムにより、搬送を自動化し、省人化効果を実現することができます。例えば、AGVである「CarriRo®」を導入した物流・運輸会社が省人化施策に成功した事例もあります。

 

» CarriRo®の導入事例を見てみる

 

②:自動倉庫システム

自動倉庫システムは、商品の入庫、保管、出庫を一元的に管理し、倉庫業務を効率化します。主な種類は以下の通りです。

 

  • パレット型:パレット単位で商品を保管・管理するシステム。高い空間効率を実現します。
  • バケット型:コンテナ単位で商品を管理する方式。軽量商品の保管に適しています。
  • フリーサイズ型:ラックに直接商品を格納するシステム。多様なサイズの商品に対応できます。
  • 移動棚型:棚を移動させる仕組みで、省スペースながら高い保管効率を実現します。

 

自動倉庫システムを導入することで、上下空間を有効活用でき、省スペース化と大幅な省人化を両立させることができます。

 

③:WMS(倉庫管理システム)

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の在庫や入出庫作業を一元管理するシステムです。入荷から出荷までのデータをリアルタイムで管理できたり、ヒューマンエラーを削減し、業務の正確性を向上させたりすることができます。

 

中規模以上の物流センターでは、特に導入効果が高いシステムです。複雑な在庫管理や返品処理を効率化し、業務全体の精度を向上させます。自社の規模やニーズに合ったシステムを選ぶことが重要です。

 

④:自動ピッキングシステム

自動ピッキングシステムは、ロボットや機械を活用して商品をピッキングする仕組みです。ピッキング作業を効率化することにより、大量の商品処理が可能になります。また、作業ミスを削減し、正確性と作業スピードが向上することも魅力の一つです。

 

大規模倉庫で自動ピッキングシステムを導入すれば深刻な人手不足の解消に成功します。導入後の継続的な効果測定や運用改善も欠かせません。

 

⑤:DAS(デジタルアソートシステム)

DAS(デジタルアソートシステム)は、仕分け作業を効率化するデジタル表示器を活用したシステムです。主な特徴を以下に挙げます。

 

  • デジタル表示器に従って仕分けを行うため、ミスを防げる。
  • 視覚的な情報提供で、従業員の作業効率が向上する。
  • 紙ベースの作業リストが不要となり、作業スピードが大幅に向上する。

 

このシステムを活用すれば、短時間で大量の仕分け作業を正確に行えます。物流センター全体の業務効率化にも大いに貢献します。

 

物流自動化の事例

上記のような物流倉庫の自動化システムを導入して、成功を収めた事例を3つご紹介します。

 

参考:物流・配送会社のための物流DX導入事例集|国土交通省

 

①:AGV導入事例【株式会社ライジング】

 

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株式会社ライジングでは、台車型物流支援ロボット「CarriRo AD」を導入し、工場内の搬送業務を自動化しました。この取り組みにより、省人化と効率化を大きく進めています。

 

株式会社ライジングは増産に伴う人手不足や、二階建て新工場での搬送時間増加といった課題に直面していました。そんな中、「CarriRo AD」の導入を決断し、無人搬送を目指した結果、これらの課題を解決しています。

 

「CarriRo AD」は、自律移動機能を持つロボットです。「CarriRo AD」の導入による効果を以下にまとめます。

 

  • 月間搬送距離290kmに短縮
  • 年間約1080万円のコスト削減に成功
  • 省人化効果によって導入費用はわずか1年で回収

 

また、自動ドアやリフターとの連携機能を自社開発で追加することで、階層間の移動も完全自動化しました。AGVは初期導入費用や技術開発コストが高い点が懸念される場合もありますが、省人化効果によって導入費用はわずか1年で回収しています。長期的には、人件費削減や生産性向上を通じてさらなるコストメリットが得られます。

 

» CarriRo®の製品ページを見てみる

 

②:自動倉庫導入事例【三菱商事株式会社】

三菱商事株式会社は、月額制倉庫ロボットサービス「Roboware」を提供し、多様な業界や倉庫規模に対応した柔軟な物流自動化を実現しています。

 

このサービスでは、棚搬送型ロボット「Ranger GTP」や立体型仕分けロボット「Omni Sorter」を組み合わせています。「Ranger GTP」を使用することで、棚が自動的に作業者の元に運ばれる仕組みを構築。

 

得られた効果は以下の通りです。

 

  • 高齢者やパート従業員でも作業効率を高めることが可能
  • ピッキング生産性が従来の2倍以上に向上

 

「Roboware」は、物流自動化を検討する企業にとってリスクを抑えた有効なソリューションの一つです。導入のハードルを下げながら効率化を推進する方法として、多くの企業に採用されています。

 

③:自動ピッキングシステム【トランコム株式会社】

物流業界では、労働力不足や長時間労働、重筋作業などの課題が深刻化しています。トランコムでは、これらを解決するため、倉庫作業の自動化を進めてきました。トランコム株式会社では、有軌道無人搬送台車(RGV)や自動搬送車(AGV)を活用し、自動倉庫システムとピッキングロボットを組み合わせた物流施設を構築しています。

 

具体的には、RGVを活用した自動倉庫を導入し、空間の有効活用と在庫管理の効率化を達成しています。また、AGVによる地上搬送やロボットパレタイズを導入することで、ケース単位の自動積み付けやピッキング作業も自動化しました。

 

多様なシステムを組み合わせることで導入や運用が複雑になる点が懸念される場合もあります。しかし、トランコムのシステムは既存倉庫への後付けや拡張性を重視して設計されています。段階的な導入を採用することで、リスクを抑えながら自動化を進めることができます。

 

まとめ

本記事では、物流倉庫を自動化するメリット・デメリットを解説しました。この記事を読むことで、物流業務の効率化や自動化の利点・課題について具体的なイメージがつかめたのではないでしょうか。

 

物流自動化のポイントをもう一度おさらいしましょう。

 

  • 物流倉庫の自動化は、EC市場の成長や人手不足に対応するために重要
  • 自動化の導入で効率化・省人化・品質安定化につながる
  • 導入時には初期コストなどの課題にも目を向ける必要がある

 

物流倉庫を自動化することで、物流現場の生産性向上や業務負担軽減が実現できるでしょう。